うつ病と性格
日本では100万人を超える人がうつ病を患っていると推測されています。
もしかすると、あなたや、あなたのご家族もうつ病で苦しんでおられるのかもしれません。「どうしても悲観的に考えてしまう」「自分を責めてしまう」といった考え方や性格傾向をなんとかしたいといってカウンセリングに来談される方もいます。
うつ病と性格の関連は、精神医学ではずいぶん昔から研究されてきました。ここでは、うつ病になりやすい性格の特徴や、改善の方法などをご紹介します。
うつ病になりやすい性格
心理テストでわかる5つの性格(ビッグファイブ)でも紹介しましたが、精神医学ではうつ病と関連の深い性格類型として、次のようなタイプが考えられています。
循環気質
ドイツのクレッチマーによって提唱された性格類型です。親切で社交的、明朗活発であると同時に、気弱な一面ももっている性格です。「循環」とは、ぐるぐる回るといった意味ですから、社交的な面と気弱な面が交互に入れ替わるということですね。人に合わせるので優柔不断になりがちで、板挟みになってうつ状態になることがあります。
執着気質
完璧主義で責任感やこだわりの強いタイプの人です。仕事でもなんでも、徹底的にやろうとするため、無理な課題を抱えてしまってうつになることがあります。
メランコリー親和型性格
生真面目で、頼まれると断れない性格です。人と争うことを避け、ことを荒立てないように気を使います。秩序を重んじており、変化を好みません。そのために変化に弱いといった弱点ももっています。
「新型うつ」あるいは「非定型うつ」と性格
うつ病の概念が広がるにつれて、典型的なうつ病(メランコリー型のうつ)とはずいぶん違った病態や特徴を示す「うつ」の人も増えてきました。
「新型うつ」とか「非定型うつ」と呼ばれるような病態です。「逃避型うつ」「5時までうつ」などと言われることもあるようです。
過眠や過食になることが多く、趣味や余暇には熱中できるが仕事などの嫌なことがあると抑うつ症状が表れる、傷つきやすくて他責的、気分の波が大きいといった特徴が挙げられます。
「わがままじゃないか」「さぼってるのだろう」ととられることもありますが、うつ症状で苦しいのは本当です。ストレス耐性が乏しいことや、パーソナリティが十分に成熟していないといったことが影響していると考えられます。
「引きこもり」についてという記事で、
現代の日本の教育では、子どもが「万能であることをあきらめる」という機会が少ないため、他人と関わるための社会的成熟が得られにくい
と書きました。同じことが、若い人のうつの病態に影響していると考えられます。
もともとのパーソナリティ傾向としては、秩序や規範に抵抗がある、漠然とした万能感とその裏返しの無力感・不全感、自己愛的、他罰的といった特徴が挙げられることが多いでしょう。
うつ病の予防・再発を防ぐために
さて、うつ病の予防や再発防止のために、「性格」という視点から工夫できそうなことはなんでしょうか?
まずは自分のパーソナリティの傾向や特徴を知る、ということは大切です。
「そうか、この完璧主義が高じてうつになったのかもしれない」
「自分を抑えてまで周囲に合わせすぎたのかも」
「嫌なことを避けていた」
と気づいて得られるものも大きいでしょう。うつ的な思考の特徴として、「悪いところ」ばかりに目が向きがちになるので、同時に、自分の「良いところ」を自覚しておくことも重要だと思います。
とはいえ、性格はそうそう変えられるものでもないのも事実でしょう。
「性格を変えるんだ!」と力んでみても、性格なんて目に見えないし、どうすればいいのか分かりません。
こんなとき、マザーテレサの良く知られた次のような言葉が手助けになるかもしれません。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
「性格を変えよう」とがんばるのではなく、「思考」や「言葉」から始めるといいということです。
自分が今、どんなことを考えているかを眺める練習をして、言葉の使い方に注意を払います。他者に対する言葉だけでなく、心の中でつぶやく自分自身に対する独り言も同じです。
「ちぇっ、また失敗した」
「やっぱり私はダメだなあ」
といったセルフトークに気づくことや、あるいはいつのまにやら考えたり、空想したりしている頭の中の「物語」(ネガティブなストーリーを一人で想像しては落ち込むということを、たくさんの人がしています)を意識しておくと、「行動」や「習慣」も少しずつ変化してくるのではないでしょうか。
続き→うつ病とカウンセリング
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