電話・メール・オンラインカウンセリングのメリットとデメリット
カウンセリングは、一般的には対面で行われます。安心して自己開示できるよう時間と場所を定めて、カウンセラーとの関係性のなかで心理的な問題を扱っていくのがカウンセリング、あるいは心理療法です。
しかし、災害時の緊急派遣などのように、避難所や屋外での相談活動が求められることもあります。
また、いのちの電話などの電話相談も活用されています。
メールやSNS(LINEなど)を使ったサポートの試みも増えてきました。
ここでは、対面以外のカウンセリングについて、そのメリットやデメリットも含めてお伝えします。
対面以外のカウンセリングとしては、次のような形態が代表的です。
- 電話相談
- メールカウンセリング
- 手紙・FAXによるカウンセリング
- 訪問カウンセリング
それぞれ、特徴や利点・欠点があります。
Contents
電話相談・カウンセリング
いのちの電話以外にも、地方自治体などが電話相談を行なっていて、多くは無料で利用することができます。
厚生労働省も「こころの健康相談統一ダイヤル」を開設しています。
- 誰にも話せない気持ちを表現して楽になることができる
- 問題が交通整理され、解決の糸口や方向性が見えてくる
- 相談先や医療機関などの情報を教えてもらうことができる
- 匿名で相談できる(ところが多い)
といったメリットがあります。
電話・スカイプカウンセリング
一般社団法人日本臨床心理士会のサイトには、対面以外のカウンセリングということで、開業カウンセラーが行う電話相談についても取り上げられています。スカイプ(Skype)やZoomなどのインターネットを介した無料通話サービスを利用したインターネット・カウンセリング、オンライン・カウンセリングも増えてきています。
家から出られない、近隣に臨床心理士が いないなど、特殊な事情があり、電話だけで継続したカウンセリングを受けたい方もいらっしゃ るかもしれません。そのような場合には、相談時間や料金の設定が明確な電話相談を選ぶことをお勧めします。また、自分の相談したい事柄に関してその臨床心理士がどのくらい臨床経験を積んでいるかお尋ねになることも、決して失礼にはあたりません。電話相談では声と言葉だけが手懸りとなります。そのため、相談なさる側としては問題の詳細や深層が伝わりづらいと感じることもあるでしょう。また、相談を受ける側にも、面接相談とは異なる電話相談特有のセンスや技術が求められます。電話相談は単発的な相談や緊 急時の相談として世界的にも幅広く活用されており、対応の技術や効果と限界についての 研究がさらに深まることが期待されています。
有料の継続相談の場合は、料金の支払いなどがありますので、匿名というわけにはいかないでしょう。しかしカウンセラーとの継続した関係ができることのメリットも大きいと思われます。
「困ったことがあれば、またあのカウンセラーに相談しよう」
と感じられること自体がサポートとなることもありますし、「次のカウンセリング」までの時間にさまざまな思いを温めて抱えることで、変化や成長が促進されます。
メールカウンセリング
メールカウンセリングとは、電子メール(E-mail)を使った相談です。メリット・利点としては、次のようなことが挙げられます。
- 都合のいい時に相談を書くことができる
- 会って(あるいは電話などで)話すことに抵抗がある人でも利用できる
- 外出しにくいとき、あるいは遠距離の場合でも利用できる
- 思いを文章に書くこと自体が、問題の整理や気づきとなることがある
- 自己開示しやすい
- 後から読み直すことができる
デメリットとしては、どんなことが考えられるでしょうか?
- 返信までにタイムラグがある
- 相づちや表情などの言葉以外の情報のやりとりができない
- ある程度の文章力、読解力が必要
- カウンセラーの介入やサポートが限定される
文章は誤解されやすいですし、また、限られた情報の中での支援には限界や危険性もあります(医療機関への受診が必要かどうか、自殺の危険性は、といったことをメールだけで判断するのは相当難しいでしょう)。
手紙やFAXによるカウンセリング
精神分析の創始者であるジグムント・フロイトは、馬恐怖症になったハンスという少年を助けるために、ハンスの父親と手紙のやりとりをしています。
いわば、手紙相談・手紙カウンセリングと言ってもいいでしょう。
手紙やFAXを活用したカウンセリングのメリット・デメリットは、メールカウンセリングと重なると思われます。ただ、電子メールと比べると、手書きで書かれることの多い手紙の方が情感が伝わりやすいという特徴があるでしょう。また、封書などで届いた手紙は、「贈り物」としての存在感がよりはっきり伝わります。他方で、コピーや下書きを残すのでなければ、自分の書いた文章を読み返しにくいといった弱みもあります。
訪問カウンセリング
訪問カウンセリング(訪問相談)とは、カウンセラーや相談員が家庭などを訪ねて行う相談活動です。
不登校や引きこもりの人を対象にしたカウンセリングなどで、訪問による支援が有効となることがあります。また、災害後の地域支援や、精神障碍者の地域医療などでも、訪問という相談形態が活用されています。
その利点としては、
- 慣れた安心できる環境で相談することが可能
- 病院や相談機関に通う活力が乏しい人でも相談できる
- 外出や人と会うことへの不安が大きい人も相談しやすい
- 日常生活や家族の実態に即した介入が行いやすい
といったことが挙げられるでしょう。
オンラインカウンセリングのメリット・デメリット
インターネットやスマートフォンの普及にともなって、Eメールやチャット、あるいはスカイプなどを使ったカウンセリングも一般的になりつつあります。
オンラインカウンセリングには、「遠方でも専門家に相談できる」といった利点がありますが、専門家のあいだでもまだはっきりとしたコンセンサスや科学的根拠が十分ではない領域です。
オンラインカウンセリング(あるいはオンラインセラピー)を定義するなら、「インターネットを介して専門的なカウンセリング・心理療法を提供すること」となるでしょう。「インターネットセラピー」「メールカウンセリング」「遠隔カウンセリング」といった名称もあります。
インターネットカウンセリングにはいくつかの方法があります。
- Eメールあるいはテキストを書くプログラム
- ビデオ会議(電話)、あるいはオンライン・チャット
- チャットルームを利用したグループセラピーやセルフヘルプグループ
- 仮想現実(VR)を利用したセラピー
- スマートフォンのアプリなどを利用したセラピー
それぞれ、利点や欠点をもっていますので、それを見極めた上で活用することが望ましいでしょう。
オンラインカウンセリングのメリット
オンラインカウンセリング、ウェブセラピー、インターネットセラピー、スカイプカウンセリングなど、さまざまな呼び方があります。いずれも、電話やインターネットなどのテクノロジーを使って、対面ではないかたちで心理学的なサービスを提供しようというものです。
オンラインで提供される心理学サービスには次のような利点・メリットがあると考えられています。
便利でアクセスしやすい
カウンセリングルームや相談機関までわざわざ出向いていかなくてもいいので、移動時間が節約できますし、電車が遅れないかとか道路が渋滞しないかといった交通の心配をしなくてもいいというメリットがあります。電話をかけるだけ、あるいはメールを送ったり、サイトにログインするだけでカウンセラーとコンタクトを取ることができるという手軽さや便利さがまず最初の利点として挙げられるでしょう。
東京や北海道、沖縄から神戸のカウンセラーに相談することが容易にできるのです。
海外に住んでいるけれども、日本語でカウンセリングを受けたいといったときにも、オンラインカウンセリングは便利です。
経済的
対面のカウンセリング・心理療法と比べて、より料金が安くて利用しやすいことが多いといえます。カウンセリングルームを維持する経費がより少なくていいためです。定額制でいつでもチャットなどで相談できるサービスもありますね。
オンラインのコミュニケーションの方が快適な人も多い
一般的には、パソコンやスマートフォンを使い慣れている若い世代の人ほど、オンラインのコミュニケーションへの抵抗は少ないものです。むしろ、「LINEの方が話しやすい」という人も増えてきているようです。対面で話すよりは電話の方が、あるいはメールやチャットの方が、相手の反応を気にせずにプライベートなことを表現しやすいという人も多いのです。
遠距離でも、あるいは外出しにくくても利用できる
適切な相談機関まで何時間もかかるとか、あるいは身体的その他の理由で自由に外出しにくいといった事情がある場合にも、オンラインカウンセリングなら利用できます。これも、大きな利点となるでしょう。
オンラインカウンセリングのデメリットと注意点
このようにメリットもあるのですが、すべての人にとってオンラインカウンセリングが適しているとは限りません。オンラインのセラピーを選択する前に考えておいた方がいいこともあるでしょう。
アセスメント(心理学的な見立て)の難しさ
対面のカウンセリングの場合は、表情や態度などからも、その人がどのような心理状態なのかをアセスメントする(見立てる)ことができます。カウンセリングルームで実際にお会いしていて精神疾患や身体的な疾患が疑われる場合には、適切な医療機関に紹介します。ところがメールや電話だけだと、情報が限られてしまいます。ビデオ通話を使っても、十分ではないでしょう。
住んでいる地域に制限されずにカウンセラーに相談できるというメリットは、カウンセラーがあなたの地域のことをよく知らないということにもつながります。そのため、医療機関その他の相談先の情報を提供しにくいことがあります。
オンラインでのサポートが適切かどうか
電話カウンセリングやメール相談が、すべての人やすべての状況に適しているというわけではありません。投薬や入院などの医学的なケアが必要な人に、オンラインだけの関わりを続けることは、かえって害をもたらす可能性もあります。
また、引きこもりや社会不安障害の人たちにとっても、オンラインカウンセリングが役に立つこともあれば、実際に社会に出て他者と関わることが必要な時期もあるでしょう。
カウンセラーの資格や倫理
カウンセラーの資格は、カウンセラーのためというよりは、利用者の安全や権利を守るためにあるといえます。オンラインカウンセリングはカウンセラーにとっても「始めやすい」ところがあるため、資格や経験が十分ではない人がサービスを提供していることがあります(実際は、オンラインでの関わりの方がより難しいし、熟練を要すると思うのですが)。
また、自傷や自殺企図などがあった場合に、危機介入がしにくいというデメリットもあります。こうした怖れがある場合には、適切な医療機関につながっておく必要があるでしょう。
臨床心理士や産業カウンセラーといった資格には、利用者の安全や権利を守るための倫理規定が定められています。
通信手段の安全性やプライバシーの問題
スカイプなどがうまくつながらないことがあるといった問題に加えて、利用者/カウンセラー双方がメールなどの漏洩がないように気をつけなくてはいけません。
自宅にいながらカウンセリングを受けることができるということは、家族が部屋に入ってきたり、あるいは来客があるなどで、カウンセリングが途切れることもあるということです。
カウンセリングルームでは、プライバシーの守られた安全な場所が提供されますが、オンラインカウンセリングの場合、利用者が自分で安心して相談できるように工夫する必要があります。
かささぎ心理相談室のオンラインカウンセリング
「電話やZoomでのカウンセリングはできないか」
といったご希望が続いたこともあり、かささぎ心理相談室でもZoomなどを活用したオンラインカウンセリング(あるいは電話相談)を実施しています。
人との関わりが不安でひきこもりがち
自信がもてずに落ち込みやすい
自分の人生を生きていないと感じる近くに適した相談先が見つからない
メールや電話の方が相談しやすい
自分で改善する方法を学びたい
といった方の相談をお待ちしております。