アニメで見る心理療法
アメリカ心理学会(American Psychological Association)の“Psychotherapy Works”というページの動画を紹介します。従来、抑うつや不安に対しての治療は薬物療法が中心でしたが、心理療法も場合によっては同じくらいの効果があるよ、とアピールしているページです。3本のアニメーション動画が掲示されていました。
Contents
Psychotherapy: More Than a Quick Fix「心理療法:即効薬を超えて」
一つ目は、「心理療法:即効薬を超えて」というタイトルの動画。
“あなたが特別な人というわけでなければ、不安やストレス、うつを多少なりとも経験したこともあるでしょう。
しかしもしある薬が、こうした問題だけでなくなんでも、今すぐ将来にわたって処理してくれるとしたらいかがでしょう?
この薬を一度使えば、あなたをベストの状態にしてくれます。Fixitolです。
Fixitolがご利用できないのは、北アメリカ、南アメリカ、アジア、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパ、南極、北極です。…
現実の世界では、薬が必要なこともありますが、私たちがベストの自分になるための近道はありません。あなたが人生を最大限生きるための長期にわたるスキルを身につけるためには、努力とよいツールが必要です。
もし助けを求めているなら、サイコロジストと話をしてみてください。心理療法は、ストレスや不安、抑うつを効果的に管理するための手助けとなります。心理療法の副次的な効果には、よりよい健康、人間関係の改善、自己評価の向上などがあります。
ただし、心理療法に、あり得ない奇跡の治療を求めるのはご遠慮ください。”
字幕を訳すと、こんな感じになるでしょうか。Fixitolというのは、心理療法と対比されている架空の薬です。すぐに効き目がある魔法の薬ですが、そんなもの世界のどこにもありません。心理療法には即効性はないけれども、抑うつやストレスに対処し、よりよい人生を生きるための長期的なスキルを得ることができる、とアピールされています。
二つ目の動画はこちら。
Psychotherapy: Good For Your Health – Episode 2 「心理療法:あなたの健康のために – エピソード2」
“ご存知ですか? アメリカ人の多くがストレスや不安、抑うつを体験しています。そして、研究によれば、こうしたストレスは、身体的な不健康と直に関連しているのです。
悪循環に陥ると簡単には対処できなくなります。
さてしかし、ここに治療法があります!ドクターにFixitolをもらってください。この薬を一度服用すれば、こうした気がかりはあっというまに解決します。
Fixitolがご利用できないのは、北アメリカ、南アメリカ、アジア、オーストラリア、アフリカ、ヨーロッパ、南極、北極です。…
さて、心や情緒の健康が身体的な健康にも影響を与えるというのは本当のことです。
人生のストレスからもたらされた数多くの心配事に、手っ取り早い解決策はありません。けれども、抑うつやストレスに効果的だとされている治療について医師と話をしてみてもいいでしょう。資格のあるサイコロジストを推薦してほしいと医師に頼むことは、健康な心と身体への最初の一歩です。サイコロジストとの治療によって、患者は新しい理解と、一生涯使える問題解決スキルを手に入れることができます。
たとえば、あなたが落ち込んで、不安やストレスを感じているときに、より健康な選択を行なうことを手助けするのです。中程度の抑うつなど、服薬が必要な状態であっても、心理療法は薬物療法と同じ程度の効果を示します。しかも副作用のリスクがなく、再発例も少ないのです。さあ、医師と話してみるときです。しかし、奇跡の治療についてではないですよ。資格のあるサイコロジストの推薦を頼みましょう。”
またもやFixitolと対比されていますね。ちょっとしっくりこないけど、こういう宣伝方法って、アメリカ的なのかもしれません。大統領選のときも、「敵」をつくってけちょんけちょんにしてましたよね。アピールもストレートで、雰囲気だけ伝えて後は想像させる日本のCMとはずいぶん違います。
三つ目の動画は「友だち篇」。
Psychotherapy: Friends Helping Friends – Episode 3 「心理療法:友だちが友だちを助ける – エピソード3」
クレアとトムという仲良しの二人。困ったときにはいつも最初に相談します。けれども、専門的な援助が必要なときもありますよ、という内容の動画です。
転職した職場でうまくいかず抑うつ的になっているトムに、クレアはサイコロジストを勧めています。
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さて、二つ目の動画にあったような心理療法に副作用のリスクがない、という主張は間違ってると思います。薬物療法と同じく、効果のある治療には副作用もあり得ます。短い宣伝動画なので、すべてを伝えることは難しいのでしょうが、いささか心理療法を持ち上げ過ぎのようでもあります。ただ、心理療法の働きかけは、基本的には自助の力や自然治癒力を増やそうとする方向性をもっているので、関わりが終わってからも長期に渡ってその効果を実感しやすいところはあると考えられます。
「成人のうつ病患者には心理療法と薬物療法のいずれが有効か?―比較研究のメタ解析―」(大日本住友製薬の医療情報サイト)
によると、
“本メタ解析により,気分変調症患者の治療においては,薬物療法の効果が心理療法の効果を上回る可能性が示された。また,大うつ病性障害患者に対する効果は,SSRI による薬物治療が心理療法よりも優れているといえよう。しかし,これらの差異はいずれも大きいとはいえず,その臨床的な意義は不明である。脱落率が心理療法群でより低かったのは,薬物(療法)による副作用や,患者が心理療法をより好むという事実と関連があるかもしれない。また,治療開始前の重症度と両者の治療効果の差には相関が認められなかったことより,重症例に対しては心理療法の効果が不十分であるとは言いがたい。”
とまとめられていました。実際のところは、日本の精神科や心療内科では薬物療法と医師による精神療法が中心に行なわれており、心理的な課題や人間関係の悩みなどが大きい患者さんに心理士による心理療法が併用される、ということが多いのではないかと思います(精神療法と心理療法は、どちらもpsychotherapyという言葉の訳語ですが、日本では慣習的に医師によるものが「精神療法」、心理士によるものが「心理療法」と呼ばれています。医師による精神療法は15分から30分程度の時間で行なわれることが多く、心理士による心理療法は40分〜50分程度の枠で実施されるのが一般的です)。
“両者は共にうつ病性障害患者の治療において有用で,それぞれが独自の効果を示すといえよう。”
とあるように、両者が補い合うことができれば、患者さん/クライエントさんの益が最も大きいでしょう。
日本国内でカウンセラーを探している方は、下記を参考にしてみてください。
臨床心理士に出会うには(一般社団法人 日本臨床心理士会)
カウンセリングのご案内
カウンセラーはいずれも医療や教育などの幅広い領域における経験の長い臨床心理士です。
カウンセラーの経歴や考え方については、カウンセラーの紹介をご覧下さい。複数名の臨床心理士が在籍していますので、ご本人とご家族のカウンセリングを並行して行なうことも可能です。また、「カウンセラーと合わないと感じる」「他のカウンセラーに交代してほしい」といったご要望に応えることもできます。もちろん、「どう接したらいいか」といったご家族の相談も承っています。
カウンセリングルームは、兵庫県芦屋市のJR芦屋駅から徒歩3分ほどのところにあります。神戸・三宮方面、大阪・尼崎・西宮方面からもアクセスしやすい場所です。
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