名前をつけるということ
新しくできたわたしたちの相談室、名前は「かささぎ心理相談室」といいます。
この名前が決まるまでには、それなりの紆余曲折がありました。
覚えてもらいやすい名前がいいねということで、動物の名前にしようということになったのですが、めぼしいものは、たいていすでにどこかの名称になっていたりします。
いくつか候補があがったなかで、なぜ最終的に「かささぎ」になったのか。
いろいろ理屈もあったりはするのですが、そういうことばにしやすいことはおいおい語っていくとして、まずは、ややことばになりにくい「名づけのプロセス」の記憶を記しておきたいと思います。記憶がうすれないうちに。
まず、「かささぎ」という名前が、記憶のどこからかすーっとやってきました。
しばらくそれを、意識のなかにぼんやりとおいておきました。そうすると、はじめは少し違和感のあった語感が、少しずついまの自分のこころもちとなじみはじめました。そしてある瞬間、「あ、これかも」と思う。頭のなかでカチッと音がするような感じです。
紙に書いてみる。声に出してみる。仲間と相談する。いろんなひとの意見を聞く。ああでもない、こうでもないと話しあう。
そういうプロセスのなかで、なんどもカチッと音がして、「これかも」という予感がしだいに「これでいこう」という確信に変わっていきました。
どこかから天啓が降りてきて一発で決まった、というのではなく、まるで、用心深いくせに好奇心の強い動物が、こっちの様子をうかがいながらじわじわと近づいてくるような、そんな決まりかたでした。そういうプロセスも「かささぎ」っぽいかなと思ったりします。
そしていよいよ、最終的に名前が決まったときには、うれしさと同時に、背筋がのびるような責任感も感じました。名前をつけるということは、「それ」を、「それ以外のもの」から区別して、他者との交流の世界に送りだすということ。よろしくおつきあいください、と挨拶すること。
名前がついたときのうれしい気持ちを忘れずに、わたしたちの相談室を大切に育てていきたいと思っています。
これからどうぞ、よろしくおつきあいください。(A)