あなたはタイムマシンを開発しました
電車の中吊り広告に、次のような文章がありました。
あなたはタイムマシンを開発しました。
いくらで販売しますか?
値付けの理由も答えなさい。
「実際のインターンシップ課題より」とあるので、就職活動をしている若い人たちが、この質問に答えるのでしょう。
自分だったらどう答えるかとついつい考えてしまいました。
「ぜったい売りません」「過去に戻って万馬券を買って、就活をやめます」なんて答えてしまいそうですが、それでは採用されないですよね、きっと。
みなさんだったら、どう答えますか?
この中吊り広告を見て、ブリーフセラピー(短期療法)の手法のひとつの「タイムマシン・クエスチョン」を連想しました(ときどき使うことがあります)。
「もしもタイムマシンに乗って10年後のあなたを見に行くとしたら、あなたは何をしていますか? どこで誰といて、どんな光景が見えて、何が聞こえますか?」
といったことを尋ねます。
「うーん、その頃には会社を辞めて自分のしたい仕事を始めて・・・」
「そのときには、家族もうまくいってて、気楽にランチでも食べに出かけてるかも」
なんて返事が返ってくるかもしれません。
同じくブリーフセラピーでよく使われる「ミラクルクエスチョン」(「もしも奇跡が起こって、寝ている間にあなたの問題が解決していたとしたら、どんな変化でそれに気づきますか?」)と合わせて、「可能世界」に意識を向けてもらうことで、「問題」や「欠点」に焦点化された心の状態を動かそうとします。
未来を具体的にイメージしてもらうことで、その人のもっている可能性やリソース(資質や資源)、変化に向かう力が引き出されるのです。
タイムマシンだったら過去にも行けるわけで、イメージの中で昔の自分や家族と対話してもらったり、トラウマ的だった体験を書き直したりする、なんてことをすることもあります。
想像のなかで未来や過去の自分と対話してみると、可能性や気づきがもっと広がるかもしれませんね。
【参考文献】
黒沢幸子 『タイムマシン心理療法―未来・解決志向のブリーフセラピー』日本評論社、2008年