感情の起伏が激しいときには自分に「三人称」で語りかけるといいらしい
ツイッターでもツイートしたのですが、Newsweekに次のような記事が掲載されていました。
自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コントロール法
誰しも、怒りとかイライラといった感情に悩まされることがあります。自分自身が
、あるいは身近な人が「感情の起伏が激しくて困っている」ということもあるかもしれません。
取り上げられていたのは米国の心理学者たちが行った実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情をコントロールしやすくなるというものです。
記事のソースとなった研究はこちらです。
三人称のセルフトークによって、認知的に無理なく感情の調整をしやすくなるということが、磁気共鳴機能画像法(fMRI)などによって明らかになったといった内容でした。
「三人称のセルフトークは、比較的労少なく自己コントロールすることを可能にするだろう」と結論づけられています。
「私はイライラしている」
を
「彼(あるいはじぶんの名前)はイライラしている」
と頭のなかで言い換えることで、ネガティブな感情体験をコントロールしやすくなるということですね。
Newsweekには、こう記されていました。
ジェイソン・モーザー准教授によると、心の中の独り言を前述のように三人称にすることで、自分自身のことでありつつ他者を見るような距離感を作ることができるのだという。自分の体験から心理的な距離感を作ることで、感情がコントロールしやすくなるのだ。
自分を三人称で呼ぶというふるまいは、幼い子供によく見られますよね。
サッちゃんはね
サチコというんだほんとはね
だけどちっちゃいから
じぶんのこと
サッちゃんてよぶんだよ
おかしいな
サッちゃん
という童謡があります。
まだ「私」という一人称を使えない幼い子供が、周りの大人から呼ばれている名前で自分を言い表すのですね。
英語ではこうした現象を、ラテン語で三人称の人や物を表すilleに由来してイリイズム(illeism)というのだそうです。
そういえば、セサミストリートのエルモが、自分を三人称で呼んでいました。ある程度の年齢になってから、自分を三人称で呼ぶことは、「幼い」とか「かわい子ぶっている」ととらえられることもあります。
でも、大人になってから自分を三人称で呼ぶというふるまいには、記事にもあるように「体験から心理的な距離感を作る」といった働きもあるようです。
漫画家の水木しげるさんが、自分を「水木さん」と呼んでいたそうです。また、歌手の矢沢永吉さんの名言(?)に「俺はいいけどYAZAWAがなんて言うかな?」という言葉があります。いずれも、生身の自分と第三者から見たイメージを分離させて、自分を外から見るという心の働きがあるようです。
これは、自分を「演じる」ということにもつながるでしょうし、自分を俯瞰的な視点から相対的に捉えるということでもあると思います。
心理学的に見たら、「セルフモニタリング」や「マインドフルネス」とも関係しているのではないでしょうか。
自分が何を体験していて、どう考えたり、反応しているのかを客観的に気づくのがセルフモニタリングです。
また、マインドフルネスも、自身の思考や感情に気づいて、価値判断抜きに観察するという態度です。
「おやおや、サッちゃんはずいぶんイライラしているみたいだ」
「水木さんは悲しくて仕方がないらしい」
と、自分を三人称で表現してみることで、イライラや悲哀などの感情に「呑み込まれる」のではなくて、「内的体験を見つめる」ことがしやすくなるのでしょう。
感情という川の流れに呑み込まれて溺れてしまうのではなくて、岸辺から「こんなふうに水が流れている」と観察するような態度が、「内的体験を見つめる」ということです。
そして、じぶんの体験に気づくことができれば、思考や行動は、自然と適切な方向に変化していくし、気分も回復していくことが多いのです。