子どものうつ病とカウンセリング
子どものうつ病
かつては「子どもはうつ病にはならない。なぜならうつ病になるほど精神的に成熟していないから」と考えられていました。
ところが近年の疫学的な調査では、子どもの5~8%くらいにうつ病に罹患するということがわかってきました。
小児期ではおよそ2%、思春期で4~8%です。
また、思春期のうつ病は、女性の方に多く見られます(成人と同じく、うつ病の有病率は女性は男性の約2倍だそうです)。
うつ病の症状
うつ病の中心的な症状は、
- 抑うつ気分
- 興味・喜びの喪失
です。
関連して、
- 食欲の減退
- 睡眠障害
- 焦燥感
- 疲れやすさ(気力の減退)
- 無価値観や罪責感
- 思考力や集中力の減退
- 自殺関連行動
などの症状が見られることがあります。
ここで挙げたような症状が複数、二週間以上続くときに、児童精神科医によってうつ病と診断される可能性が大きくなるでしょう。
大人との違い
ただし、同じうつ病でも大人と子どもでは表れ方がやや異なることがあります。
子どもの場合、抑うつ気分よりも「イライラ」や「怒りやすさ」が目立つことがあります。ちょっとしたことに過敏に反応しやすいこともしばしば見られます。食欲が減退するのではなく、逆に食べすぎたり(過食)、眠すぎたり(過眠)といったことが見られることもあります。
不登校との関連
また、不登校などの背景に、子どものうつ病(うつ状態)が見られることもありますし、発達障害や不安障害などが関連していることもあります。
ただし、不登校だからといって必ずうつ病であるというわけではありませんし、「学校に行かないのはおかしいから、きっとメンタルな問題があるに違いない」と短絡的に考えること自体にも大きな問題がはらまれています(みんなが学校や会社に行くのが「当たり前」という発想自体が変わっていく方がいいんじゃないかと個人的には思います)。
子どものうつ病の治療
子どものうつ病が疑われるときには、どうすればいいのでしょうか?
一般的には、子どもに詳しい精神科や心療内科を受診することが多いと思われます。
学校でしたら、養護教諭やスクールカウンセラーにまず相談してみるということもできます(必要だったら適切な病院を紹介してくれるでしょう)。
市町村にある教育センターや、児童相談所などに相談することも可能です。
うつが重いときには、児童精神科医などを受診して、抗うつ薬を処方してもらうことになるでしょう。子どものお薬の効き方や副作用などは大人とはまた違ったところもあるので、心配なことがあれば主治医に相談しながら進めていきます。
また、経度~中度のうつの場合には、親や学校の先生に関わり方・接し方をアドバイスしたり、本人への心理的な関わりが中心になることが多いでしょう。
主治医が必要だと判断すれば、本人や家族へのカウンセリングが導入されます。
子どものカウンセリング
大人と違って、子どもは自分の気持ちや身体の状態をうまく言葉で言い表すことが苦手です。
言葉達者になった思春期の子でも、気持ちの綾を適切に表現するのは難しいものです(これは、大人もいっしょですよね)。
ですので、子どものカウンセリングを行う場合に、カウンセラーは、絵を描いたり、おもちゃを用いたりして、言葉以外の関わり方を試みます。
プレイセラピー(遊戯療法)や箱庭療法など、遊びを介した治療的な関わりを行うこともあります。
うつの背後に、ADHDや自閉症スペクトラム、学習障害などの発達障害が見られることもあり、それらへの配慮も必要になってきます。
カウンセリングでも、親や家族、学校の先生たちと上手に連携することで、子どもの状態は改善しやすいと思われます。