女性のうつとカウンセリング
うつ病の有病率を男性・女性で比べると、女性の方が約2倍になると言われています。
外国の研究でも、日本の研究でも、同じような傾向が示されているので、これはある程度、生物学的な理由が背景にあると思われます。
男性と比べて、月経などの影響により女性はホルモン分泌の変動が大きいのが特徴です。
妊娠や出産、閉経など、女性のライフサイクルには、心身が大きく変化する時期がいくつかあります。
月経症候群(PMS)や産後うつ、更年期障害といった不調が女性のうつと関連しています。
心理社会的な要因としては、現代社会においてはまだまだ女性の方が、社会的立場が変化しやすいということが挙げられます。出産のために休職・退職しなければならなかったり、育児や子育ての負担が女性に偏るといったことも、理由の一つでしょう。
仕事を離れることでそれまでの人間関係が維持しにくくなって孤立しがちだったり、核家族化してきて十分なサポートを得難いといった事情も考えられます。
うつ病の症状自体に男女差があるわけではありませんが、女性に多いうつに否定形うつ病などがあると言われています。典型的なうつ病では、不眠や食欲低下が見られますが、否定形病像の場合、過食や過眠傾向が認められることもあります。冬季うつ病のような、季節性のうつ病も女性に多いとの報告もあります。
カウンセリングに来談される方も、どちらかといえば男性より女性の方が多いようです。
これは、女性の方がうつを体験しやすいからというだけでなく、男性は文化的に人に頼ることを嫌うとか、感情表現が下手といった理由もありそうです。
実際にカウンセリングに来談されたときにも、男性は事態を知的に分析して、対処を考えよう(あるいは教えてもらおう)とする姿勢が強いことがあります。
あくまで一般的な傾向ですので、もちろん個人差はありますが。
どこまでが生物学的な違いなのか、文化的なものなのかはわかりませんが、傾向としては、女性の方が上手に気持ちを表現したり助けを求めることができるようです。
カウンセラーにも同じような傾向はあって、男性はどちらかというと頭でっかちになりやすいかもしれません。
ある先生は「男はカウンセラーに向いとらん」と言っていました(この先生も男性ですが)。
そんな身も蓋もないこと言われても困りますけれど。
女性と男性の違いについて書きましたが、ユング心理学の考え方によれば、女性の中にも男性的な一面があるし、男性の中にも女性的な側面が含まれています。
自分に足りないところを意識して少し補う、といったことが試みられたらいいのでしょうね。