ポジティブ心理学的介入による幸福感の向上と抑うつ症状の緩和
アブストラクトだけ読むシリーズです。
Journal of clinical psychology誌から、引用の多いものを選んでみました。
ポジティブ心理学的介入による幸福感の向上と抑うつ症状の緩和:実践に適したメタアナリシス
Enhancing well-being and alleviating depressive symptoms with positive psychology interventions: a practice-friendly meta-analysis†
Nancy L. Sin, Sonja Lyubomirsky
First published: 19 March 2009 https://doi.org/10.1002/jclp.20593
May 2009
ポジティブな感情や行動、認知に焦点を当てたポジティブ心理学の介入は、幸福感を高め、うつ症状を改善するのだろうか、という疑問をメタアナリシスで研究してみましたという論文です。臨床家に使いやすい実用的なガイダンスを提供することが目的とのこと。
研究では、4266人を対象とした51の介入に関するメタアナリシスを実施しています。
その結果、ポジティブ心理学的な介入は、幸福感を有意に高め、抑うつ症状を減少させることが明らかになりました。
また、介入の効果には、参加者のうつ状態や年齢、介入の形式や期間などの要因が影響していました。
特に、うつ病の患者や、比較的年齢の高いクライエント、改善意欲の高いクライエントの治療には、ポジティブ心理学のアプローチを取り入れることが推奨されます。個人セラピーやグループ療法として、比較的長い期間実施することが望ましいとのことでした。
ポジティブ心理学的な介入って、例えば「3つのよいこと」のエクササイズとか、ああいうのですかね。
最初にポジティブ心理学の考え方を知ったときには、何かポリアンナ的に感じて馴染めなかったのですが、この頃は年齢のせいか、人生におけるささやかな良いことを素直に喜ベルようになった気がします。
日本語で読めるポジティブ心理学の本をいくつか紹介しておきます。
・マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦』宇野カオリ訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2014年
・マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学が教えてくれる「ほんものの幸せ」の見つけ方』小林裕子訳、パンローリング株式会社、2020年
・前野隆司『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』PHP新書、2017年
こちらはセリグマンのTED TALK
心理学や精神医学は長年、「病理モデル」を基本としてきた。それは確かに効果を上げてきて、多くの精神的疾患を治療できるようになった。他方で、心理学者や精神科医は病気を探す人になってしまって、困難は外的なもので、個人ではどうにもできないと捉えてきた。人間の選択や決定、責任ということを忘れてしまった。また、普通の人の人生をさらに良くすることに目を向けてこなかった。
こうしたことへの反省から、ポジティブ心理学が発展してきた、といったことを話しています。