反社会的パーソナリティ特性(自己愛、サイコパス、マキャベリアニズム)を持つ人は、幸福についてどう考えているか?
今日は、
反社会的パーソナリティ特性(自己愛、サイコパス、マキャベリアニズム)を持つ人は、幸福についてどう考えているか?
という研究を紹介します。
Conceptions of Happiness Mediate the Relationship Between the Dark Triad and Well-Being
Department of Psychology, Keimyung University, Daegu, South Korea
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2021.643351/full
ダーク・トライアド
ダーク・トライアド(Dark Triad)って、そのまま訳すと「闇の3つの特性」くらいになるのでしょうか? おどろおどろしい印象の言葉ですね。
心理学では、ダーク・トライアドとは、マキャベリアニズム,サイコパシー傾向,自己愛傾向という3つの反社会的なパーソナリティ特性を指しています。
Frontiers in Psychology誌に発表されたこの研究では、ダーク・トライアドの特徴を多く持つ人々が、幸福の性質や価値、原因、結果についてどのように考えているかということを明らかにしています。
研究結果を見る前に、ダーク・トライアドについておさらいしておきましょう。
日本語で読めるのだと、この論文でダーク・トライアドについて簡潔にまとめられています。
日本語版Dark Triad Dirty Dozen (DTDD-J) 作成の試み
田村 紋女, 小塩 真司, 田中 圭介, 増井 啓太, ジョナソン ピーターカール
“DT とはマキャベリアニズム,サイコパシー傾向,自己愛傾向の総称であり,これら3 特性は代表的な反社会的なパーソナリティとされる(Paulhus & Williams, 2002)。マキャベリアニズムは他者操作的で搾取的な特性であり(Christie & Geis, 1970),サイコ パシー傾向は利己性や希薄な感情を代表とする対人的・感情的側面と衝動性のような行動的側面を持つ特性である(Hare, 2003)。そして,自己愛傾向は賞賛や注目,地位や名声を求め,他者に対して競争的で攻撃的な特性である(Raskin & Hall, 1979)。”
ということですね。
ダーク・トライアド・ダーティ・ダズンって、尺度の名前も闇っぽいです。
12項目で、ダーク・トライアドの3つの特性傾向について見ることができる心理尺度です。
さて、ダーク・トライアドと幸福の関連についての研究に戻りましょう。
研究では、1777人の韓国人の被験者が、心理的幸福とダーク・トライアドに関する評価を受けました。加えて、幸福の概念についての8つの調査にも回答したとのこと。
Fear of Happiness Scale
Externality of Happiness Scale
Fragility of Happiness Scale
Transformative Suffering Scale
Inflexibility of Happiness Scale,
Valuing Happiness Scale
Inclusive Happiness Scale
Eudaimonism And Hedonism Scale.
の8種類だそうです。いろんなのがありますね。
幸福を損なう幸福概念
その結果、マキャベリアニズムおよびサイコパシー傾向は、幸福を損なう幸福概念を持っていることが明らかになったそうです。
マキャベリアニズムとサイコパスの特徴を多く持つ人は、人生に対する満足度が低く、より多くの否定的感情や、より少ない肯定的人間関係を報告する傾向があったととのことです。
これは、マキャベリアニズムとサイコパス傾向の強い人は、「幸福は束の間のものだ」とか「幸福は悪いことにつながる」といった、幸福を損ないがちな概念を支持することと関連していると考えられています。
また、これらの人々は、幸福を得るために競争的なアプローチをとりやすく、トラブルにつながることもあるといいます。「世界は敵対的で、競争して他者を蹴落とさないと幸福は得られない」といった幸福概念が影響しているのですね。
「幸福とは他人の不幸を眺めることから生ずる快適な感覚である」(ビアス 『悪魔の辞典』)といった幸福概念(シャーデンフロイデ!)を持っているとよろしくないってことでしょうか。
他方、ナルシシズム傾向(自己愛性人格特性)は、幸福を促進する幸福概念の支持と関連しているということも、この研究からわかるそうです。
ふむ。
これについては注意書きがあって、この研究で使われたナルシシズムの尺度は、自己愛の比較的適応的な特徴(誇大性や肯定的な自己評価)を主に測定していて、搾取性や自己愛的脆弱性といった不適応に繋がりやすい特徴は省かれていること、また自己愛性格の人は社会的に望ましい反応と自己強化バイアスの傾向を示すので幸福に関する質問への反応に影響が出た可能性があるとのことでした。
自己愛パーソナリティの人が、社会的にはけっこう成功していることもあるので、ナルシシズムが幸福と関連しているというのは、分からなくもない気がします。
でも長い目で見たら、周りの人々との尊重しあえる関係の方が、幸福につながっているのだと思います。
「あらゆるものの中心に愛を置き、愛し愛されることに至上の喜びを見出せたとき、幸福は訪れる」とジークムント・フロイトは言ったそうですよ(ググってみた)。
皆様が健やかで幸せでありますように。
ブログの執筆が続きますように。
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半年にわたって続いていた某教育委員会の終わりなき会議が、やっとひと段落したので今夜は少し幸福です。