宇宙かささぎ
「かささぎ心理相談室」という名前が決まった経緯については少し書きましたが、かささぎのロゴマークにも、ちょっとした物語があります。
デザインをしてくださったのは、清水克久さん。デザインのお仕事もされていますが、清水さんは美術家、あるいは現代アート作家です。その作品は、シンプルで端正で、見る人に強い印象を残します。自我や個人の意図を超えたところにたちあらわれてくるような、作品をつくりたい。以前お話ししたときにそのようなことをおっしゃっていました(言いまわしは少し違ったかもしれませんが)。清水さんの作品は、まるで「もの」が直接語りかけてくるようで、見ていると視線が奥へ奥へと吸いよせられていくような気がします
さて、その清水さんにかささぎ心理相談室のコンセプトをお伝えして、案内カードと名刺のデザインを依頼しました。すると、なんと8パターン(!)もの案を届けて下さいました。これがまたどれも魅力的で、デザイン案を見ているだけでわくわくしてきます。しかも、このなかのひとつが自分たちの相談室のリーフレットになるなんて。
しかし、ただ鑑賞して楽しんでいるわけにもいきません。その魅力的な8つの案のなかから、「たったひとつ」を選ばなくてはならないわけです。
ああでもない、こうでもないとデザイン案を並べて話しあっているうちに、そのなかの1羽のかささぎが、いちばん高いところを飛んでいそうだとひとりがぽつり。すると、まるで宇宙を飛んでいるみたいだね、そういえば人工衛星みたいにも見えるねと、どんどん連想がふくらんでいきました。かくしてこのかささぎは私たちのあいだで「宇宙かささぎ」と命名され、相談室をいっしょに支えてくれる大事な仲間になったのでした。
なぜ「宇宙を飛んでいそう」という連想にひかれたのか、考えてみました。カウンセリングというのは、地面にしっかりと足をつけて歩いて行くことを支えるものではないか、という意見も聞こえてきそうです。
でも、だからこそ、はるか高い空を飛ぶものを私たちは必要とするのかもしれません。私たち地をゆくものが出口が見えなくなったり困り果てたりしたときにも、宇宙かささぎには、けろっとした顔で高い空を飛んでいてほしい。そんな思いが宇宙かささぎの連想をふくらませていったように思います。
旅行から帰ってくると見慣れた日常が新鮮に思えるように、はるか遠くにあるものに思いを至らせることで、私たちが容易に飛び立つことのできないこの現実も、また違った姿に見えてくるかもしれません。目を閉じて、「宇宙かささぎ」の視点を借りて、はるか遠くの地球にいる自分の姿を見下ろしてみる。これ、ちょっとした瞑想になりそうですね。