『どこへ行こうか、心理療法ー神田橋條治対談集』
『どこへ行こうか、心理療法ー神田橋條治対談集』創元社、2022年
読みました。
神田橋先生と、増井武士先生、村山正治先生、鳴瀬悟策先生の対談集です。
僕は神田橋先生には数えるくらいしかお会いしたことがないのですが(講演でお話をうかがうことなども含めて)、心理職として個人的にいちばんハードだった時期(みんなありますよね、そういうとき)にたくさん本を読んで、先生の言葉に支えられたという感覚があります。
同じ時期に、鹿児島の合宿に参加して、温泉宿に連れて行っていただいていっしょにお湯につかったのもいい思い出です。空港まで車で迎えに来られて宿まで送っていただきました。
大ベテランのカウンセラーや精神科医たちが、またたびを嗅いだ猫みたいに神田橋先生に甘えている姿や、「なんでこれだけの情報でそんなことまでわかるの!?」「なんでそんなことできるの?」という不思議な技の数々(今思えば、それは語っている人の表情や雰囲気、身体感覚などを精緻に感受しているからこそなんだろうけれど)に驚いてばかりだったのを覚えています。
増井先生、村山先生、成瀬先生といった、レジェンドの方々との言葉のやり取りがとてもよくて、ところどころでガツンとゆさぶられて、いろいろ余韻の残る読書体験でした。
三人の先生方との対談で一貫しているのは、
「今、ここ」
「エンカウンター」
「関係を生きる」
「出会った関係に別れはない」
「言葉よりも感じを大事に」
「命は本来、考えたり論じたりするものではない」
「体におまかせ」
といったことでした。
ここ数年くらいの心理臨床のトレンド(オンラインとかあれこれ)とは違う向きもありますが、何十年臨床実践をされている先生方の体験から出てきた言葉なので、きっとこちらがより根っこに近いのだろうと感じます。
ということくらいしか言語化できないのがもどかしい気もしますが、この「感じ」をもって、「さて、どこに行こうか」とちょっと背を伸ばして遠くを眺めてみましょうか。