自分の薬をつくるー「興味・関心がない」ときに

かささぎ心理相談室のある芦屋市茶屋之町のあたりには、小さなお店がいくつもあります。

ケーキ屋さん、パン屋さん、雑貨屋さんなど、天気のいい日に散歩がてら歩いてみるだけでも楽しい街並みです。

先日、カフェの2階に古本屋さんができているのを見つけました。

本の種類は多くないのですが、料理本とか旅の本など、たぶんなんらかの基準というか好みによって選ばれた本がここに並んでいるのだなと分かるような書棚です。

こういう書棚って、人の家に招かれて本棚を見せてもらってるみたいでわくわくしませんか?

せっかくだから何か一冊買ってから仕事に行こうと思って手に取ったのが、『自分の薬をつくる』(坂口恭平、晶文社、2020)でした。坂口恭平さんは、『0円ハウス』や『独立国家のつくりかた』など、刺激的で楽しい著作がいくつもあるアーティストです。

というわけで、さらに散歩して、近所のパン屋さんで買ったいちじくのパンをつまみながらぱらぱらとページをめくっているところ。

カバーの裏にはこんなふうに書かれています。

”みんなの「悩み」に対して強力な効果があり、

こころと体に変化が起きる「自分でつくる薬」とは?

二〇一九年に実際に行われたワークショップを

基に、「いのっちの電話」の秘密を紙上体験”

ここで言われている「自分の薬」とは、これをしていると体調や気分がよくなる、落ち着くといった「日課」のことだそうです。

いくつかの日課を紙に書き出して「しおり」(旅のしおりみたいなやつ)をつくる、ということをするらしい。

たとえば、朝起きたら散歩する、楽器を弾く、午後からは絵を描くなど、そういった日課ですね。

こうした日課が何の薬になるんでしょうか?

苦しんでいる人の多くが、

といったことや、さらにそこから「死にたい」と感じている状態にあります。

好奇心や関心は、外の世界に対して「情報をインプットしたい」ときに抱く気持ちです。

うつのときにはこんな風に感じやすくなりますね。

それがなくなってしまうということは、外の情報はもうお腹いっぱいで、入れたくないっていうことを表しています。

「必要なのは死ぬことではなく、休んで、消化して、ウンチをすること」

なんだと坂口さんは言います。

インプットではなくて、「アウトプット」することが「自分の薬をつくる」ということなのです。

「やりたいこと」をアウトプットできるようになるためには、まず「やりたくないこと」に気づいて、それをやめなくちゃいけません。

「やりたくないこと」がだんだん減ってきたら、次第に、自分の中の「やりたいこと」や「こういうのが好き」という「声」が聞こえてくるようになります。

何をどんな風にアプトプット=表現すればいいのかは、人それぞれ違うでしょうし、練習が必要なことだってあるでしょう。

認知行動療法の行動活性化も、やりがいのある行動や気持ちが楽になる行動を増やすという意味で似たところがありますね。

「自分の薬をつくる」ことができるようになると、「自分でつくれる、自分で治療できる」という感覚自体が、自信となります。

外からの声ー親の声、先生の声、友達の声などーを鵜呑みにするのではなくて、自分の声を聞くこと、自分の声こそが最良の薬となるのだと、本書の「まとめ」には書かれていました。

僕の最近の「自分の薬」は、下手なギターを弾くことと、朝ヨガをすることです。

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