認知の歪みを改善したい

「認知」とは、その人の物事の捉え方や考え方を表しています。物事をネガティブに捉えすぎて落ち込んだり、極端な反応をしてしまうような考え方を、心理学では「認知の歪み」と呼んでいます。

「あなたの認知は歪んでいるよね」なんて言われると誰だっていい気はしないものなので、最近では「非機能的思考」などと表現されることも多いようです。

ロダン「考える人」

ABC理論

認知療法・認知行動療法では、落ち込みや不安といった感情は、出来事それ自体によって引き起こされるのではなく、「その出来事をどう捉えたか」(つまり認知)によって影響されると考えられています。

A(出来事)→B(認知)→C(感情)

「今朝、友達に話しかけたけれど返事が返ってこなかった」(A)

「私はきっと皆から嫌われてるに違いない」(B)

「憂鬱で、学校に行きたくない」(C)

というわけです。

「あの子、今日はボーッとしていて私に気づかなかったんだな」(B)

とか

「家族とケンカして機嫌が悪かったんだろう」(B)

というように捉えていたら、憂鬱な気持ちにはならなかったでしょう。

自動思考

何かが起こったとき、あるいは何かを見たとき、自動的に頭に浮かぶ考えのことを「自動思考」と呼びます。

苦手な上司の顔を見たら、「また叱られるに違いない」なんて考えが浮かぶことですね。

どんな思考が出てくるかは、その人のこれまでの体験や性格によって違います。

教室に入ったとき、皆がチラチラと私の顔を見ている(A)

という状況があったとして、

「私は皆に嫌われてるのかな」

と捉える人もあれば、

「顔に何かついてるんだろか」

と捉える人もいます。

思考のクセみたいなもので、人それぞれ違うのですね。

「私は絶対〜すべきだ」

「白か黒か、はっきりさせなくちゃ」

「すべて私のせいだ」

といった極端な考え方は、日常生活や対人関係でいろんな困難を生じさせます。

カウンセラーや家族、友人といった第三者に話をすることで、自分の考え方を少し客観的に眺めることができるようになります。

よくある認知の歪み(非機能的思考)

白黒思考(オール・オア・ナッシング)

物事を白か黒か、ゼロか100かで捉えないと気が済まないといった思考です。

「99点は0点と同じ。100点じゃないと意味ない」

なんて完全主義的に考えていると、生きづらいですよね。

「60点取れたらまあよしとしよう」

と考えてみてください。

過度な一般化

一度起こったことでも「いつもそうだ」と捉えてしまう。

「私はいつも失敗する」

「私はいつも嫌われる」

といった考え方です。

結論への飛躍

根拠が十分にないのに、未来のことや人の考えを決めつけてしまうような思考です。

「私は将来必ず不幸になるに違いない」

「だから何をやっても無駄だ」

「きっと私のことを馬鹿にしているだろう」

と考えて落ち込んだり、回避的な行動を撮ったりするのです。

すべき思考

「〜すべきだ」「〜であるべきだ」という思考は、あまりに強いと自分を縛ってしまいます。

「〜すべき」ができないと、自分を責めたり、落ち込んでしまうでしょう。あるいは他人に「〜すべき」を向けて、イライラしたり、攻撃的になることもあります。

「ベッキーさんが出てきたな」と気づいたら、「まあいっか」とつぶやいてみてください。

私のせいだ(個人化)

自分に関係ないことでも、「私のせいだ」と自己の責任につなげてしまうような思考です。

本当は自分に責任があるわけじゃないのに、自分のせいにして落ち込んだり、自責したりします。

「地震が起こったのは僕がお母さんの言うことを聞かなかったからだ」

「両親がケンカするのは、私がしっかりしていないからだ」

といった考え方です。

「私のせいじゃない!」と大きな声で言ってみましょう。

コラム法

また、コラムなどの枠の書かれた紙に、

を書き出してみるという方法もあります。

認知行動療法では、7つのコラムを使って非機能的思考を見える化して、より機能的に考えることができるように手助けします。

こころが晴れるコラム

書くことで、自分の思考のクセにきづきやすくなります。

認知の歪みを改善するためのカウンセリング

コラム法のように認知行動療法のやり方を使って改善することもできるでしょうし、カウンセラーに話をすることによっても、自身を客観的に見つめ直すことはできます。

「どうも自分は考え方が極端だな」

「マイナス思考が強くて、自信が持てないな」

といったことで悩んでおられる方は、カウンセリングを利用してみるのも一つの方法だと思います。

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