性格って変えることができるの?-人生の満足度とビッグファイブ・パーソナリティ特性
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人生にどれくらい満足していますか?
アメリカの心理学者Ed Dienerが開発した「人生満足度尺度(SWLS:Satisfaction With Life Scale)」という心理尺度があります。
以下の5つの質問に7件法(1 全くそう思わない、2 ほとんどそう思わない、3 あまりそう思わない、4 どちらともいえない、5 すこしそう思う、6 かなりそう思う、7 とてもそう思う)で答えてください。
5つの項目の数値を足したものが、あなたの「人生満足度」となるそうです。
1. ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い
2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
3. 私は自分の人生に満足している
4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう
日本人の平均点はおよそ20点前後だそうです(1)。
おおよそ、次のように解釈されます。
- 31~35点…非常に満足
- 26~30点…満足
- 21~25点…やや満足
- 20点…ニュートラル
- 15~19点…少し不満
- 10~14点…不満
- 5~9点…非常に不満
人生の満足度とパーソナリティ特性
Journal of Personality and Social Psychology誌に掲載された研究(2)によると、人生の満足度はその人のパーソナリティ特性と関連していることがわかりました。
このことは従来の研究でも明らかにされてきたのですが、この研究では、両者の関連が生涯にわたって長く続く、ということも明らかになりました。
研究者は、オランダの世帯を対象とした全国調査により2008年から2019年に収集されたデータを分析しました。
最初の調査時に16歳から95歳までのオランダ人参加者9,110人が複数のアンケートに回答し、ビッグファイブ性格特性(開放性、良心性、外向性、同調性、情緒安定性)と社会とのつながりや人生全体への満足度が評価されました。
その結果、性格特性と人生の満足度の関連は、ほとんど生涯を通じて変わらず、人生やキャリアに対する満足度ともっとも強く関連する特性は、「情緒安定性」であることが明らかになりました。
5因子性格理論(ビッグファイブ)については、次の記事も読んでみてください。
情緒安定性は、神経症傾向とも呼ばれています。この特性が(不安定な方向に)強い人は、外からの刺激に敏感に反応します。神経質で、不安を感じやすいのです。危険に対して敏感なので、行動は慎重になります。極端な場合には、不安障害やうつ病といったメンタルヘルスの問題と結びつくこともあります。
また、「開放性」(Openness to experience)は、知性とか、知的好奇心、遊戯性とも訳されますが、開放性が高い人ほど、生活満足度も高いことが明らかになりました。
つまり、情緒的に安定していて、知的好奇心が高い人は、人生や仕事に対する満足度が、生涯一貫して高い傾向がある、ということですね。
(2)“The Link Between Personality, Global, and Domain-Specific Satisfaction Across the Adult Lifespan,” by Gabriel Olaru, PhD, and Manon van Scheppingen, PhD, Tilburg University, Wiebke Bleidorn, PhD, University of Zurich, and Jaap Denissen, PhD, Utrecht University. Journal of Personality and Social Psychology, published online March 20, 2023.
性格を変えるためにできること
5因子性格理論は、ビッグファイブモデルまたはファイブファクターモデル(FFM)とも呼ばれ、人間の性格を理解するための枠組みとして広く受け入れられています。ビッグファイブの次元は以下の通りです:
- 経験への開放性(Openness to experience)
- 統制性(Conscientiousness)
- 外向性(Extraversion)
- 協調性(Agreeableness)
- 神経症傾向(Neuroticism)
それぞれ、
ここでは、各要素の概要と具体的な改善策を紹介します:
経験への開放性
この因子は、好奇心、創造性、新しいアイデアや経験を探求する意欲の度合いを指します。開放性が高い人は、想像力が豊かで、心が広く、新しい多様な価値観を受け入れる傾向があります。
開放性を高めるには
- 新しい経験や趣味に没頭する。
- 旅行をして異文化を体験する。
- 質問したり、新しい情報を求めたりして、好奇心を育む。
- 文章を書いたり、絵を描いたり、楽器を演奏するなど、創造的な活動をする。
といった方法があります。
統制性
自己に対するコントロールの因子です。統制性が高いということは、自身の行動に責任をもち、計画的に秩序だった目標思考の行動を取る傾向があります。きっちりしていて、信頼できる人、といったイメージでしょうか。
統制性を高めるには
- 明確な目標を設定し、それを管理しやすい小さなタスクに分解する。
- 毎日のルーチンを作り、維持する。
- ToDoリストやカレンダーなどの生産性向上ツールを使用する。
- 時間管理を徹底し、仕事の優先順位を効果的につける。
- 計画や約束を守ることで、自己規律を養う。
といった方法があります。
外向性
外向性とは、外向的、社交的、エネルギッシュである度合いを指します。外向性が高い人は、おしゃべりで、人付き合いが好きで、刺激を求めることが多いでしょう。
外向性を高めるには
- 定期的に社交的なイベントに参加し、他の人と関わる。
- 自分の興味に基づいたクラブや団体、グループに参加する。
- 積極的に話を聞く練習をし、会話スキルを向上させる。
- 社交的な場面で自信をつける。
- 社会的な状況において、徐々に自分のコンフォートゾーンから自分を押し出す。
といった方法があります。
協調性
協調性は、思いやりや好感度の度合いを測るものです。協調性が高い人は、共感力があり、思いやりがあり、人と協力して行動します。
協調性を高めるには
- 相手の立場に立って考え、共感力を養う。
- 積極的な傾聴を実践し、会話の中で確認する。
- 紛争解決のスキルを身につける。
- 異なる視点や意見に耳を傾ける。
- 優しさを実践し、寛大な行為に取り組む。
といったことに取り組んでみてください。
神経質(情緒安定性)
神経質さは、不安、怒り、抑うつなどのネガティブな感情を経験する傾向を反映しています。神経質度が低い(情緒安定性が高い)人は、ストレスに強く、反応しにくいと言われています。
情緒の安定を高めるには
- 運動、マインドフルネス瞑想、日記を書くなど、ストレスに対する健康的な対処法を身につける。
- 必要であれば、セラピーやカウンセリングなど、専門家の助けを借りる。
- ポジティブな考え方を養い、感謝の気持ちを実践する。
- 自分の感情を認識し、管理することで、感情的な知性を向上させる。
- 友人や家族などの強力なサポートネットワークを構築する。
といったアプローチがあります。
性格(パーソナリティ)特性は、人生においてある程度は一貫したものなので、すぐに変えるのは難しいかもしれません。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
よく知られたマザー・テレサの言葉です。
性格を変えたければ、習慣や行動、言葉、思考を変えればいい、という意味にも取ることができます。
運命を変えるのは難しくても、思考あるいは心の中のつぶやきに気をつけるということなら、ちょっとはできそうです。
そういえば今、『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』という本を読んでいるところなので、また今度紹介しますね。