アダルトチルドレンと恋愛依存・共依存──繰り返す関係パターンの理由とは?

なぜ「恋愛がうまくいかない」のか?
「好きな人ができても長続きしない」「いつも同じような終わり方をしてしまう」「相手に合わせすぎて疲れてしまう」――
そんなふうに、恋愛関係がしんどくなってしまうことはありませんか?
一見すると「相性の問題」「性格のせい」と思われがちですが、その背後には、アダルトチルドレン(AC)や愛着不安といった心の背景が関わっていることがあります。
たとえば、子ども時代に安心できる愛着関係を築けなかった人は、「見捨てられるのでは」「本当の自分を知られたら嫌われる」といった不安を抱えやすくなります。その結果として、恋愛の中で過剰に相手に依存したり、逆に距離をとってしまったりといったアンバランスな関係パターンが繰り返されるのです。
恋愛がうまくいかないのは、「あなたがダメだから」でも「愛される価値がないから」でもありません。
むしろ、それはあなたが人とつながることに真剣で、大切にしたい気持ちが強いという証でもあります。
この記事では、そんな恋愛パターンの背景にある心のメカニズムを紐解きながら、「どうしたらもっと楽に、人と向き合えるようになるか」を一緒に考えていきます。
恋愛依存・共依存とは?
「相手がいないと不安でたまらない」「相手の機嫌ひとつで自分の心が揺さぶられる」「嫌われるのが怖くて、自分を押し殺してしまう」
そんな経験に心当たりがあるなら、それは恋愛依存や共依存と呼ばれる関係のパターンかもしれません。
恋愛依存とは、恋人やパートナーとの関係に強く依存し、自分の価値や安心感を相手の存在に委ねてしまう状態です。
一方、共依存は「相手を支えなければ」「この人のために頑張らないと」といった**“相手中心”の生き方に自分を埋め込んでしまう関係性**です。共依存の人は、相手の問題や感情に巻き込まれやすく、自分自身のニーズや感情を後回しにしがちです。
どちらも背景には、強い自己否定感や見捨てられ不安があることが多く、「愛されるためには頑張らなければならない」「相手がいなくなったら自分は空っぽになる」といった思い込みが根底にあります。
このような関係パターンは、子ども時代の経験――たとえば親からの一貫しない愛情や、過度な期待、感情を受け止めてもらえなかったこと――と深く関わっていることがあります。
本来の恋愛は、お互いを尊重し合い、安心できるつながりを築くものです。けれど、「愛されるために無理をする」「嫌われるのが怖くて自分を出せない」といった関係を繰り返しているなら、そこには未解決の心の課題が隠れているかもしれません。
まずは、「それでも人を愛したいと思っている自分」に気づくことから、少しずつ関係のパターンを見直すことができます。
アダルトチルドレンと共依存の関係
共依存的な恋愛パターンの背景には、アダルトチルドレン(AC)としての生育歴や心のパターンが影響していることが少なくありません。
アダルトチルドレンとは、機能不全な家庭環境──たとえば、親が過干渉だったり、無関心だったり、感情を受け止めてもらえなかった──で育った結果、大人になっても人との関わりに困難を抱えやすい人のことを指します。
ACの人は子ども時代、「ありのままの自分」でいられなかった経験を多く持っています。
親の期待に応えようとがんばりすぎたり、親の感情をなだめる“役割”を背負わされたりする中で、「自分は人に必要とされることでしか存在価値がない」という深い思い込みを抱くようになります。
この心のパターンは、やがて大人の恋愛関係にも引き継がれていきます。
たとえば:
- 相手の気分や態度に過剰に反応し、振り回される
- どんなに傷つけられても「この人を支えなければ」と思ってしまう
- 自分の感情やニーズよりも、相手を優先しすぎる
- 「自分がいなければこの人はダメになる」と信じて関係を切れない
こうした共依存的なふるまいは、表面上は“尽くしている”ように見えても、実は**「見捨てられたくない」「必要とされないと不安」という強い恐れから生まれている**ことが多いのです。
また、ACの人は恋愛においても「家族の中で背負ってきた役割」を無意識に再現してしまうことがあります。
たとえば、母親の代わりに父親の愚痴を聞いていた子どもが、大人になって恋人の話を一方的に受け止め続けるような関係に陥ったりします。
このような“再演”のパターンに気づき、それをやさしくほどいていくことが、共依存的な関係性を変える第一歩になります。
繰り返される恋愛パターンの背景にある「愛着スタイル」
なぜ、恋愛になると不安になりすぎたり、逆に距離をとりすぎてしまったりするのでしょうか?
その背景には、私たちが子どもの頃に身につけた**「愛着スタイル」**が大きく関係しているといわれています。
愛着スタイルとは、乳幼児期に親や養育者との関係を通して形成される、「人とどう関わるか」の基本的なパターンのことです。
このスタイルは、大人になってからの恋愛やパートナーシップにも強く影響を及ぼします。
主な4つの愛着スタイル
- 安定型:自分にも他人にも基本的な信頼を持ち、安心して親密な関係を築ける
- 不安型:愛されているかが常に不安で、相手にしがみついたり過敏に反応しやすい
- 回避型:親密になること自体に不安があり、心の距離をとりがち
- 混合型(不安定型):近づきたい気持ちと、傷つきたくない気持ちが交錯し、関係が不安定になりやすい
アダルトチルドレンの方は、不安型や回避型、あるいはその両方が混ざった「混合型」の傾向を持っていることが多いとされています。
これは、子どもの頃に安心して甘えることができなかったり、親との関係が一貫性を欠いていたりした場合に形成されやすいといわれています。
恋愛における愛着スタイルの再演
たとえば、不安型の人は「相手に見捨てられるのではないか」という不安から、過度に相手にしがみついてしまったり、連絡の頻度に敏感になりすぎてしまうことがあります。
逆に回避型の人は、相手との距離が近づくと「このままでは傷つく」と感じて、無意識に関係を避けてしまうことも。
こうした無意識の反応パターンを繰り返すことで、恋愛がうまくいかず、「またダメだった」「自分には恋愛が向いていない」と自己否定に陥ってしまうこともあります。
けれど、自分の愛着スタイルを理解することで、「どうして私はこう反応してしまうのか?」が見えてきます。
そしてそれは、自分や相手を責めるのではなく、関係を“ほどいていく”ための第一歩にもなるのです。
関係をほどいていくために──理解とケアの視点
恋愛依存や共依存、繰り返してしまう関係のパターンを変えたい――そう思っても、「どうすればいいのかわからない」「変わらなければいけない自分がしんどい」と感じている方も多いかもしれません。
でも、無理に変えようとする必要はありません。
大切なのは、まず**「なぜ私はこうなってしまうのか?」という理解**から始めること。
その理解の積み重ねが、やがて人との関係を少しずつ“ほどいていく”力になります。
感情に焦点をあてる「EFT(感情焦点化療法)」
EFT(Emotionally Focused Therapy)は、愛着スタイルや感情のパターンにアプローチする心理療法です。
特にパートナーシップの改善や、感情の扱い方の再学習に効果があるとされ、多くの国で用いられています。
EFTでは、「怒り」「不安」「さみしさ」といった感情をただ抑え込むのではなく、その奥にある“本当の気持ち”に気づいていくプロセスを大切にします。
たとえば、「怒りっぽい自分」の奥にある「見捨てられることが怖い」という気持ちに触れることで、相手との関係の中で本当に求めているものが見えてきます。
自分を知ることから始める回復のプロセス
また、個人カウンセリングの中でも、自分の愛着スタイルや共依存的なふるまいの背景を丁寧に見つめることで、「こうすればいい」と言われるのではなく、“こうしたい自分”に出会っていくプロセスが始まります。
カウンセリングや心理療法は、「問題を解決する場」というよりも、「関係性を見直し、自分を理解し直す安全な場」だと言えるでしょう。
繰り返してしまう関係性には、理由があります。
それはあなたが「うまくやれていないから」ではなく、過去の心の傷が、今の関係に影響を与えているからです。
そのことに気づき、少しずつ手放していく過程は、決してひとりで行わなくてもいいのです。
神戸で恋愛依存・共依存に対応したカウンセリングを受けるには
恋愛がいつもうまくいかない、関係が重たくなりすぎて苦しい――
そんな悩みを抱えたとき、自分だけで答えを出そうとするのはとても大変なことです。
神戸・芦屋エリアには、恋愛依存や共依存、アダルトチルドレンの課題に対応できる臨床心理士・公認心理師が在籍する相談室があります。かささぎ心理相談室でも、愛着の問題や繰り返されるパターンに焦点をあてたカウンセリングを行っています。
初回の面接では、「恋愛がつらい」「自分を大事にできない」といった率直な思いを丁寧にうかがい、あなたに合ったペースでサポートを提案します。
また、オンラインでの相談にも対応しているため、神戸周辺にお住まいでない方や外出が難しい方も、安心してご利用いただけます。
関係性のしんどさに向き合うのは勇気のいることですが、あなたが安心して話せる場所は、きっとあります。
「今の関係を変えたい」と思ったときが、回復のスタートラインです。
よくある質問(Q&A)
Q. 不倫関係から抜け出せません。相手を忘れられないのは依存ですか?
A.
不倫に限らず、「やめたほうがいいとわかっているのに離れられない」という状態は、恋愛依存や共依存のパターンが関わっていることがあります。
とくにアダルトチルドレンの傾向がある方は、「愛されないと存在価値がない」「一人になるのが怖い」と感じやすく、関係を切ることに強い不安を抱く傾向があります。
依存や執着を責めるのではなく、「なぜこの関係に惹かれてしまうのか?」という背景を一緒に見つめていくことで、抜け出す糸口が見えてくることがあります。
Q. 恋人とのケンカが絶えません。些細なことで爆発してしまいます。
A.
繰り返されるケンカの裏には、感情の抑圧や未解決の不安が隠れていることがあります。
とくに「見捨てられるのが怖い」「気持ちをうまく伝えられない」という愛着不安があると、些細なやりとりがきっかけで感情が爆発しやすくなります。
感情のコントロールというより、「本当は何を感じているのか」を整理することが、関係性を変えていく大きなヒントになります。
Q. DVやモラハラ的な恋愛関係に陥りやすいのはなぜですか?
A.
自分に対する価値が低く感じられる状態(自己否定感)があると、「こんな自分を受け入れてくれる相手なら、多少のことは我慢しなきゃ」と思ってしまうことがあります。
また、子ども時代に暴力や言葉の攻撃を“当たり前”と感じて育った場合、大人になってもそのような関係を無意識に“慣れたもの”として再演してしまうことも。
まずは、「こんなに苦しい関係を、私はどうして選んでしまうのか?」という問いを、責めるのではなく理解するところから始めることが大切です。
Q. 浮気を繰り返すパートナーを許してしまいます。これは共依存でしょうか?
A.
繰り返し裏切られても関係を切れず、「自分がもっと頑張れば…」と思ってしまう場合、共依存的な関係性に陥っている可能性があります。
相手を変えようとするよりも、「自分はこの関係のなかでどんな役割を担ってきたのか」「どこで“我慢”が当たり前になってしまったのか」に気づくことが、心の回復につながります。
Q. 共依存から抜け出すにはどうすればいいですか?
A.
共依存は“病気”ではありませんが、長年身についた人間関係のクセのようなものです。
そのため、急に「依存をやめる」「自立する」といった方向ではなく、まずは「自分の気持ちを感じる」「安心して話せる関係をもつ」というところから丁寧に見直していくことが大切です。
カウンセリングでは、繰り返されるパターンの背景にある心の傷や思い込みに焦点をあてながら、安全な関係性のなかで少しずつ回復を進めていきます。
Q. 毎回同じような恋愛のパターンを繰り返してしまいます…
A.
何度も似たような関係に陥ってしまう背景には、無意識に引き寄せてしまう“愛着のクセ”があることがあります。
たとえば「安心すると不安になる」「放っておかれると追いかけたくなる」といった反応は、子ども時代に身についたものが大人の恋愛にも影響している可能性があります。
そのパターンに気づき、「なぜこの相手に惹かれるのか」「なぜ同じ展開になってしまうのか」を一緒に紐解いていくことで、新しい関係の築き方が見えてくることがあります。
Q. 恋人と離れるのが不安で、ひとりになれません。
A.
「ひとりになるくらいなら、しんどくてもこの関係を続けてしまう」
そう感じてしまう背景には、見捨てられ不安や存在不安があるかもしれません。
誰かとつながっていることで、自分の価値や安心感をなんとか保っている──そんな感覚に心当たりがある方も多いです。
「ひとり=孤独」とは限りません。安心できる関係を持ちながら、少しずつ“自分とつながる”力を育てていくことが、回復の鍵になります。
Q. つい相手に尽くしすぎてしまいます。愛されたいだけなのに…
A.
「自分を後回しにして相手に尽くす」ことが愛だと思い込んでいる方は、“愛されるために頑張る”という生き方が染みついている場合があります。
しかし、本当の意味での愛は、無理をしないでもつながっていられる関係の中で育つものです。
尽くしすぎて疲れてしまう関係のなかでは、自分の安心や幸せが置き去りになっていないかを一度見つめ直すことが大切です。
Q. 恋愛そのものが怖いです。誰かと深く関わるのが苦手です。
A.
恋愛や親密な関係が怖いと感じるのは、過去に傷ついた経験や、愛されなかった記憶が影響していることがあります。
特にアダルトチルドレンの方は、愛=痛みや不安と結びついてしまっていることが多く、無意識に「誰かと距離が近くなること」そのものを避けようとする傾向があります。
「関わりたいけれど、怖い」という気持ちは矛盾ではなく、心が守ろうとしているサインです。
その怖さを誰かと一緒に見つめていくことで、少しずつ人とのつながりが安心に変わっていく可能性があります。
Q. 自己肯定感が低くて、恋愛中はずっと不安になります。
A.
自己肯定感が低いと、「愛されるためには頑張らなきゃ」「嫌われたら終わり」と、恋愛に過剰な力が入ってしまいやすくなります。
特にアダルトチルドレンの方は、「本当の自分には価値がない」という深い思い込みを持っている場合があり、相手からの評価に一喜一憂して苦しくなることも。
カウンセリングでは、「なぜ自己否定が強くなってしまったのか?」という背景を見つめ直すことで、少しずつ安心感を取り戻していけます。
Q. LINEの返信が遅いだけで不安になります。依存でしょうか?
A.
LINEやメッセージの「返信の間」が強い不安を引き起こすのは、“見捨てられ不安”が刺激されている可能性があります。
頭では「忙しいだけ」とわかっていても、心が「嫌われたのかも」「大切にされてないのかも」と感じてしまうと、不安や怒りが抑えきれなくなることも。
これは依存というより、「安心できない関係性しか知らなかった」過去からくる学習された感覚かもしれません。感情の背景を知ることで、反応の仕方も変わっていきます。
Q. 「重い」と言われてフラれます。私は恋愛に向いていないのでしょうか?
A.
「重い」と言われる背景には、愛されたい気持ちが強すぎて、相手にすべてを求めてしまうという状態があるかもしれません。
でもそれは、決して「あなたが悪い」わけではなく、愛に飢えたまま大人になってしまった心が、ようやく愛を得ようとしているサインでもあります。
恋愛に向いていないのではなく、「安心して愛せる状態をまだ経験していないだけ」です。
関係性の安心度が変われば、あなたの“重さ”も自然に落ち着いていきます。
Q. 依存と愛の違いってなんですか?
A.
愛は「相手のことを大切に思い、尊重し合える関係」。依存は「相手がいないと自分を保てない状態」です。
依存では、相手に不安を埋めてもらおうとする気持ちが強く、「一緒にいたい」ではなく「離れないで」という願いが強くなりがちです。
愛と依存は紙一重に見えることもありますが、自分の感情やニーズを知ることができるようになると、その違いが少しずつ見えてきます。
Q. カウンセリングに行くタイミングがわかりません。
A.
「こんなことで相談してもいいのかな」「まだ耐えられるし…」と思ってしまう方も多いですが、違和感やしんどさを感じた時点が“相談していいサイン”です。
カウンセリングは、問題が大きくなってから始める場所ではなく、「自分の気持ちを整理したい」「いつもと同じパターンを繰り返している気がする」という段階で活用することができます。
相談すること自体が、自分を大切にする一歩です。