友だちの石を見つける、あるいは無料のカウンセラーを探す方法

『ユング自伝』には、子ども時代のユングと石に関する次のようなエピソードが書かれています。

10歳の頃、ユングは筆箱の中に自分で刻んで作った人形を入れました。そして川で拾ってきた石といっしょに、誰にも見つからないように屋根裏に隠しておいて、ときどきこっそりそこに行って人形と石を眺めていました。自分がどうしてこういうことをしているのか、その意味ははっきり分からなかったけれども、少年ユングにとってその行為はとても大切なことでした。

10歳という年齢は、前思春期にあたりますが、子どもが自分自身と出会っていくうえでとても重要な時期だと考えられています。認知発達の面では「形式的操作期」と呼ばれる段階に入り、抽象的に考えることができるようになってきます。この時期に「どうして私はこの私なのだろうか」「私はどこから来て、どこに行くのか」といったことを強く意識する人もいます(自我体験と名づけられています)。自分自身と出会うためには、誰にも話さない秘密の体験や、ある種の孤立体験が大切な役割を果たします。

ユングにとって、秘密の石は彼が自分自身を発見するための手助けをしてくれたのだと考えられます。親や家族でもなく、友だちでもない、けれども確かに自分のそばに確固として存在しているもの。そんな石をユングは見つけて、筆箱に隠していたんじゃないでしょうか。人間でも生き物でもないけれども、その石は、ユングにとっては大切な友だちだったのかもしれません。

ここで紹介したいのは『すべてのひとに石がひつよう』という絵本。

「友だちの石」を見つけるための10のルールが書かれています。

すべてのひとに石がひつよう

すべてのひとに石がひつよう

1.できるなら山にいく。

2.石をさがしているあいだは誰とも話してはいけない。

3.頭が地球にふれるほどからだを低くかがめる。

4.大きすぎる石はえらばない。

5.小さすぎる石もえらばない。

6.さわって気持ちのいいかんぺきな石をえらぶ。

7.かんぺきな色をさがす(川の水にひたしてみるといい)。

8.どんな形の石でもいいが、ひとつだけでもすばらしく見えるものをえらぶ。

9.いつでも石のにおいをかぐ。

10.石をえらぶときには誰にも相談しない。

ときどきこんなふうに石を探してみることがあります。

悩みごとや気がかりはとりあえず横に置いて、ぼんやりと周りを見ながらゆっくりと歩くと(ときどきかがんでみることも大事)、不思議なことにそのときの自分にいちばん必要な石と出会います。

石のでこぼこやひび割れ、色合いをじっくり眺めているといろんな連想が浮かんできます。よく見るとこの石は誰かに似ているぞと思うことも。ぶつぶつと石と話をしていると、悩んでいたことがふと軽くなったり、何かに気づくこともあります。

石は下手なカウンセラーと違って余計なことは言わないし、なんといっても料金がかからないのがいいところです(ということをカウンセリングルームのブログに書くのもどうかと思いますが)。

晩年になったユングは、チューリッヒ湖の傍に、長い時間をかけて熱心に石の塔を建てるという作業に取り組みました。その塔で一人になって、瞑想したり夢を絵に描いたりしていたようです。こうしてみるとユングは、石とのパーソナルな関わりをずっと大切にして生きてきた人のようです。(久)

 

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やっぱり人に話を聴いてもらいたいし、相談したいというかたは、神戸・芦屋・西宮のかささぎ心理相談室のカウンセリングへどうぞ。

 

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